理想の子どもの施設とは

2018年度からは合同会社という形ですが実質的には自分一人が経営する形になりました。
施設の顔として地域やよその団体などとのつながりを深めていかなければとは思うものの
生来の人見知りな性格と、毎日がいっぱいいっぱいなためなかなかできていません。
そのため他所の学童施設と比べてどこが違うのかということも正直よくわかりません。
民間学童でありながら地域の育成会学童に近い雰囲気ではないかと思っているのですが、
市内に数多くある育成会学童を知る人たちに言わせればだいぶ異質なようです。

昨年(2022年)NHK「ドキュメント72時間」という番組で川崎市にある「子ども夢パーク」が
紹介され大きな反響を呼んだことがありました。
この年に放送された回では視聴者の反響がもっとも大きかったようです。
何度か再放送されていて、オンデマンド視聴もできるようです。
NHKが番組で取り上げる前に『ゆめパのじかん』というタイトルで映画化もされています。
詳しくはそれぞれのリンク先をご覧ください。

首都圏を離れてもう30年近くになるため、この施設のことは知りませんでした。
場所は実家から10kmくらい、よく知る沿線上なので現地の風景は容易に想像できます。
都心に向かう路線に比べ全体的にのんびりした風景が続く土地です。
開設は2003年だそうです。当時私はやまさと保育園に通う一保護者で、
その2年後からこの学童との関わりが始まりました。
長い歴史を歩んで来られたのだと実感できます。

番組と映画の両方を見ました。
こんな施設があってうらやましいという反響がほとんどのようですがもちろん私も同感です。
自治体が所有するこれほどの広い場所と建物に、たくさんの大人が関わっておられます。
立地条件的にも隣は市の霊園で静かそう、子どもたちの大声は電車の音がかき消してくれるでしょう。
何をやっても誰からも文句を言われなさそうな場所に思えました。

我々はここほどのことはできていないものの、子どもへのまなざし、関わる大人のありようという
根本では共通したものを感じました。
生活面で大人が主導するのは最低限で、遊びは子どもたちのしたいように過ごさせています。
「しつけ」「礼儀正しさ」「大人が見て感心する振る舞い」よりも
「年齢に見合った子どもらしさが良い悪い両面で感じられるか」
「萎縮せず自分の素を出せているか」「言いたいことが言えているか」
などの点を重要だと考えています。
学童保育のスタッフは教員でも保育士とも違い「指導員」と呼ばれますが
(資格制度が出来て以降、正式名称は「放課後児童支援員」です)
こうしたことは日々の経験から育まれるので、大人が「指導」しても身につきません。
周囲の大人が自分のことを認めてくれていると実感して初めて、自らの中に確固たる礎、
セルフイメージを築くことができます。否定から入ってはなりません。
自動車教習所の指導員とはまったく違う関係性です。

我々には学童保育所としての役割があり、似ても似つかない点も多々あります。
名古屋市内でも地価の高い高級住宅地の学区という土地柄
近隣には大学や大病院などがあり社会的地位の高い家庭が多い
お子さん方の多くは当たり前のように中学校を受験する
といった地域性を考えると、自由すぎる施設には独特の「敷居の高さ」を感じてしまいます。
都会育ちの私が自然の中で育った人たちに対して感じる感覚です。
子どもにはこのような場所で過ごさせたいと思う一方、そこまではできないとも思ってしまいます。

滝川学区で20年。我々が辿り着いたのは
子どもたちの自主性を大切にしつつ
中に関わる大人たちは子どもの育ちの本質を理解して見守り
現代の小学生の実情に寄り添う形で留守家庭児童を預かる施設にした
ということなのかと思っています。