洋楽ドキュメンタリー映画の話

かなり長い間更新できていなかったこのコラムですが、SNSをやらない代わりに少しでも書いていかないと、と思って久しぶりに追加します。

今日(2026/2/22)先ほどまで映画を見てきましたのでその話です。
Paul McCartney: Man on the Run (日Culture-Ville)(英Trafalgar Releasing

2年前に書いたTalking HeadsとPet Shop Boysも70-80年代の洋楽好きなら常識的な存在ですが、こちらは言わずと知れたSir Paul McCartneyです。興味は無くても名前すら聞いたことない、なんて人は親世代にはたぶんいないかと思います。
それでもアルファ世代には「誰このおじいさん」状態です。子どもたちはThe Beatlesですら無反応です。

自分が左利きということもありますがFab4の中ではPaul派で、音楽的にも人間的にも一番親近感があります。
このドキュメンタリー映画ではThe Beatlesの解散から、1980年暮れのあの悲劇によりPaulが一時的に音楽活動を中止してしまうところまでが描かれていました。
私が洋楽を聴き始めたのがちょうどこの頃で当時中学生でした。6年生くらいからラジオでかかっていた洋楽で気に入る曲ができてきて、本格的に洋楽一辺倒になったのは中1から中2くらいでした。
この映画のラストシーンの後にPaulは再起してStevie Wonderと共演した”Ebony And Ivory”をヒットさせ、傑作”Tug Of War”が生まれることになります。
もっとも当時の私はPaulもBeatlesも王道すぎて興味無く、その時ヒットチャートを賑わせていた最新の曲たちを熱心に追いかけていました。
大学生になった頃、中高生から毎週のように通っていた渋谷でたまたまBeatlesの”20 Greatest Hits (1982)”の輸入盤が安売りされていたのを見つけました。常識を学ぶ意味で一度聴いてみようかと手に取ったのがきっかけでした。買ったのはUS盤で、チャートで1位を取った曲だけを集めたベストアルバムでしたからそれはそれは強烈なインパクトでした。No.1になった曲は英米で少し違いますからUK盤は収録曲も違っています。なのでそちらも探して買い、その後は最初の”Please Please Me”から順に一枚ずつ最後まで、さらにPaulのソロとWingsについても集め出してすっかり後追いのBeatlemaniaとなってしまいました。
私が生まれた日のチャートNo.1は英米ともPaul作のあの”Hello, Goodbye”で、1984年の誕生日当日付けで”Pipes Of Peace”がUK No.1になっていました。1914年英独のThe Christmas truceを描いたあの印象的なMVは大好きでした。

1990年2月に一人で英国中を旅行したことがあるのですがBeatlemaniaになりたてだった私はHeathrowに降り立った足でそのままLiverpoolに直行しました。Beatlesゆかりの地を巡るバスツアーに参加してStrawberry FieldsやPenny Laneも見られました。ただLondonのAbbey Roadあの横断歩道はあまりの定番観光地過ぎて逆に行きたい気がせず行きませんでした。
その代わりぜひ行きたかったのがKintyre peninsula、そうあの曲Mull of Kintyreです。
海隔てたすぐ向こうは北アイルランド、かなりとんでもない僻地です。
今でこそ簡単に検索してどんなところかすぐわかりますが当時は地図と時刻表しかありません。Glasgowから小型セスナ機で半島内にあるCampbeltownという町まで行けることがわかったので行ってみました。そこからPaulの農場およびMull of Kintyreは誰かに車を出してもらわなければ行けず、あてもない一人旅で案内もなくわからなかったのでCampbeltownまでで行ったことにして引き返しました。
それでも当時は満足でしたが、今となっては寒くない季節にやはり岬まで行ってみたかったです。
帰国後、英国で撮った写真をいろいろな人に見せていたのですが、父からは「こんなところに何しに行ったんだ?」と聞かれました。今は聖地巡礼なんて言葉も出来て、興味のない他人には理解できないような場所に喜んで人が集まるのもごく普通に見られるようになりました。良い時代です。昭和が終わったばかりのあの時代では「くだらない」「バカじゃないの」と一笑に付されるのがわかっていたので話が通じる人にしか言いませんでした。
Kintyreでのシーンは今日の映画内でふんだんに使われていました。歌にするくらいですからPaulにとって非常に大切な場所だったことがあらためてよくわかりました。今日の観客の中にKintyre peninsulaまで行った、なんて人は他にいたのでしょうか?

音楽ドキュメンタリー映画の中には権利関係の問題から、せっかくの映画なのにそのアーティストの曲がほとんど出てこない作品も少なくありません。今回はふんだんに使われていて見ごたえのある良い作品でした。Beatles,Paulとも知らない曲は無く、年代と日付を見るだけで何が起こった時かすぐ把握できます。60年代のBeatlesと70年代のPaulともにリアルタイムでは無く後追いなので、自分が知っているその後の時代にうまくつながってくれました。
劇場での公開は今日で終わってしまいましたがご興味ある方はAmazon Primeで見られるようです。